『キリスト教思想への招待』
田川建三 著 勁草書房、2004年 価格:3000円(税別) 『イエスという男』で、キリスト教がいかにイエスをまるめこんだかを暴露した聖書学者が、今度はキリスト教の「いいところ」をわかりやすく面白く語ってくれた、「田川建三説教集」。……かな? 田川建三さんによる、田川建三さんにしては珍しい(?)キリスト教の「いいところ」を紹介した本。 キリスト教の悪いところは悪いし、その悪さも半端ではないのだけれど、それでもキリスト教には、良いところ、すぐれたところもたくさん残しているし、神を信じるとか、キリスト教を信じるということがなくなったとしても、それでも現代社会にとって大切な受け継ぐべきものがあるのだ、ということがわかる本です。 キリスト教に対する厳しい批判は相変わらず、しかし、批判の先に見えてくるものは、実は「田川さんほど人を愛し、聖書を愛し、イエスを愛している人はいないんじゃないかな」とまで感じる、正義と公正と愛への眼差しだったりします。 まるで田川さんが話し言葉をそのまま書き下ろしたかのようななめらかな筆致で、キリスト教の優れた遺産を「良い物は良い」として懸命に語り伝え、社会の公正、人間の潔さを貫こうとする姿勢に、「田川建三による説教集」という感さえ受けました。 内容は、大きく4部構成に分かれていて、@創造論、A教会論、B救済論、C終末論に対応しています。ことに、1章の創造論は環境問題との関連で、また2章の教会論はキリスト教社会福祉論との関連で、クリスチャンでなくとも、また格別にキリスト教に関心が無い人でも、学ぶべきところが多いと言えるでしょう。いやむしろ、クリスチャンでない人に、おすすめの1冊です。(2004年10月19日記) |
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「キリスト教・下世話なQ&A」コーナを訪ねる