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『シネマで読む新約聖書

 
  栗林輝夫(くりばやし・てるお) 著
  日本キリスト教団出版局
  2005年3月25日
  価格:2200円+tax


 映画を通して、聖書を語り、人生を語る。異色のキリスト教入門書です。
 

  2年前に出された『シネマで読む旧約聖書』の、出るべくして出た続編。やはり、「聖書をつまみに映画を楽しむ」本ではなく、「映画を通して聖書を語る」キリスト教入門書である、というスタンスは一貫して変わっていません。
  旧約聖書に比べて、新約聖書というのは、物語性に富んだ部分と言えば、福音書のイエスの物語と、使徒の働きの物語、そして幻想文学の黙示録くらい。あとは、半分以上がパウロやその他の書簡集ですから、映画にそのままモチーフとして生かすテーマは、かなり「イエス」の物語に限定されていきます。
  しかし、「イエス」というにテーマにしぼった結果、その同じテーマをいかに多様な映画が多様に描いているかを紹介することとなりました。
  映画ファンにとっては、異色の切り口の映画解説にもなっていて、こちらのほうが、同じシリーズの『……旧約聖書』よりも、面白く読めるかも知れません。

  また、イエスという人物を暗示的なモチーフにしながら映画が製作されるということは、結果的に「人間イエス」の物語を描くことになるのだな、ということも、この本を読んでいると気づかされます。
  そうして描かれた「人間イエス」を映画の紹介の形で語りながら、わたしたちにも共感できる人生の一コマを同時に語るという、なかなか味わいぶかい、いい本です。(2005年3月27日記)

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