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『ちんぷんかんぷん! it’s Greek!(イッツ・グリーク)
    〜聖書ギリシア語おもしろ講座〜』

 
  橋本滋男 著
  日本キリスト教団出版局
  2005年3月20日
  価格:1260円 (with tax)


 ギリシア語の授業の余談ばかりがあつまった、とってもアカデミックで、しかしおかしい聖書のこぼれ話が満載です。
 

  著者の橋本滋男さんは、実は三十番地キリスト教会牧師の新約聖書学の恩師なのです。教え子はみんなで「シゲちゃん」「シゲちゃん」と呼んでいました。「シゲちゃん」はいつも授業で、オヤジギャグばかりとばしてましたが、授業の合間にこうしてポロリと、ちょっとした読み方ひとつで聖書の解釈にかなり重要な影響を与えてしまうようなギリシア語エピソードを、実にサラリと雑談まじりにお話されるもので、そのたびに「へー」と感心させられたものでした。
  と同時に、文字の読み方ひとつで解釈が正反対になってしまうような、あるいは解釈が何種類も考えられるような、そんな聖書が「おもしろいなぁ」とも思わされたし、「これが真理です!!」とコリカタまることもないバランス感覚も養ってもらえた、という気がします。

  この本は、そんなギリシア語授業の合間に語られるこぼれ話を一冊にまとめた、おもしろい本です。
  もちろんギリシア語の単語や文章が随所に出てきますが、全部カタカナつき、翻訳つきで、とても読みやすいし、はっきり言って、ギリシア語で書いてある例文を読み飛ばしても、じゅうぶん楽しめますから、ふだんむずかしい本を読まない人にも安心してオススメします。
  
  イエスを見ようとしたザアカイの場面では、「背が低かったので」ザアカイはイエスが見えなかったと書いてあるわけですが、原文では、背が低かったのがザアカイだったのか、イエスだったのか、実はわからない(イエスが背が低くて見えなかった可能性がある)、とか。
  十字架で死んだイエスを見て、百人隊長が言った言葉は、「本当に神の子だった」なのか「本当に神の子だったのか?」という疑問文なのか、実は判別がつかない、とか。

  とにかく、ギリシア語というのは、もともとの写本には、単語ごとの分かち書きもないし、「 」という引用符もないし、「?」というような疑問符もない、ベタベタの文字の羅列の文章なので、いったいこれが疑問文なのかそうでないのか、あるいは誰が発した言葉なのか、解釈によっていくらでも読み方があるというような文章なのです。
  まじめに読み込めば読み込むほど、実は「唯一のゼッタイの正しい聖書の読み方など、あるはずがない」ということがわかってきます。
  それがこの本の隠れたメッセージなのでしょうね。多様な読み方、多様な信仰を共に認め合い、許し合うという……。(2005年4月29日記)

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