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『性なる聖なる生 セクシュアリティと魂の交叉

 
  虎井まさ衛・大月純子/河口和也(とらい・まさえ、おおつき・じゅんこ、かわぐち・かずや) 著
  緑風出版
  2005年3月27日
  価格:1,700円 (without tax)


 セクシュアリティに悩み、宗教にも傷つけられている人にはおすすめの本です。
 

  この本は、性的にも少数者に属し、宗教的にも少数者に属している人たちによって書かれています。
  虎井まさ衛さんは、性転換した男性で、精神世界のことにくわしい方です。大月純子さんは、日本キリスト教団の牧師で、この本のなかでバイ・セクシュアルであることをカミングアウトしておられます。どうでもいいことかも知れませんが、大月さんは、三十番地キリスト教会牧師のお友だちです。
  この本は、二人のマイノリティが、自らの生き様を語り、思いを語る中で、同性愛、両性愛、性同一性障害、性転換者、などなどの性的少数者の立場を、いかに宗教が守ってくれるのか、いかに宗教が支え、助けてくれるのかを模索した本です。
  大月さんは、キリスト教の牧師という立場で、いかにキリスト教がこれまで性的少数者を差別・弾圧してきたかを明らかにし、しかし、それが本来のキリスト教のあり方ではないということを、懸命に訴えておられます。
  虎井さんは、精神世界への造詣に基づいて、キリスト教を含む諸宗教を包括したような視点から、人間の命が祝福されたものであることを宣べ伝えておられます。
  そして、2人の対談を河口和也さんが導くなかで、「あなたは生きていてよいのだ」というメッセージが伝わってきます。

  二重のマイノリティ性をかかえた人びとがそれぞれに語り、そして対談するという、たいへん珍しい本になっているのですが、考えてみると、キリスト教にとって性の問題というのは大切なのだということに思い至ります。
  キリスト教は世界の3分の1の人が信じているといわれる大宗教です。そんな広いエリアで信じる人がいる一方で、世界の10分の1の人が同性愛者だということもいわれています。当然、世界の3分の1のクリスチャンの中の10分の1も同性愛者なのです。にも関わらず、キリスト教はまだ同性愛者の存在もその尊厳も認めきれていない現実があります。細かくは、教派によって、認めると認めないが分離している状況です。しかし、これだけ世界的に影響力の大きい宗教が、少数派にしてはすいぶん多くの数の人びとを切り捨てることが本当に妥当なのか、否、すべての人を救いきるのが真の宗教というものではないのか、特定の人を選別して救うのがキリスト教なのか、などということ考えてゆくと、これは大問題なのです。
  また、日本のようなキリスト教自体がマイノリティである土地においても、キリスト教がマイノリティであればこそ、他のマイノリティの辛さ、生きにくさを理解し、受容してもよいはずのところを、実際には生きにくさを抱えている人を、やはり切り捨て、断罪しているクリスチャンが多いというのが現実です。そして、この問題に取り組んでいる日本の書物のほとんどが、「学問的に(神学的に)」「キリスト教は同性愛を受け入れることができるか」ということを、難しい言葉で論じ始めたに過ぎないような状況です。
  
  この本は、神学的にどうのこうのという論議ではなく、じっさいに信仰によって救われながら生きている性的少数者が、自らを語るというしかたで語ってくれています。そのおかげで、とても身近でわかりやすく、いかにキリスト教が性的少数者を支え、助けてくれるのかということを証しした本だと言えるでしょう。
  性の問題に悩み、生きにくさを抱えている人に、そしてそのなかでも、キリスト教によって傷つけられていると感じている人に、おすすめの本です。
  (2005年11月12日記)

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