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『J.S.バッハ 時代を超えたカントール

 
  川端純四郎 著
  日本キリスト教団出版局
  2006年10月25日
  価格:3,000円 (+ tax)

 最後の音楽職人であり、最初の芸術家であるバッハの生涯を、愛情込めて描き抜いた、画期的なバッハ伝です。
 

  音楽にさほどくわしくない人でも、一度はちゃんとしたバッハの人生の物語をたどってみたい、と思うのならば、この本は最適です。わかりやすく、読みやすく、しかし、圧倒的な資料をもとにバッハの生涯を克明につづってあります。帯の紹介文にもありますように、まさに「バッハに対する著者の強い愛が、画期的なバッハ伝を生み出した」というにふさわしい本です。
  教会音楽、宗教曲の作者としてのバッハ、市民の楽しみのための音楽の作者としてのバッハ、彼の信仰と苦悩、そして喜びや生きがいを、さまざまな角度から照らし出して、明らかにしてゆきます。
  特に、「ヨハネ受難曲」や「マタイ受難曲」におけるユダヤ人に対する差別性の問題や、ライプツィヒ市音楽監督時代に作られたカンタータにまつわる彼と市議会との軋轢。また、晩年になってすでに教会音楽家としての情熱を一見失ったのように見えた彼が、最後の作品として作った「ロ短調ミサ曲」に現れた彼の宗教性の到達点についての考察、そして「信仰なしにバッハは理解できるか」など、実に興味深い論考がたくさんつまっています。
  
  もともとは『礼拝と音楽』誌に連載されたものがベースになっており、そのまま文体も「ですます調」でやさしく読者に語りかけてくれます。少し分厚い本ですが、連載のときの雰囲気を残しており、忘れかけていた要素をあとになって思い出させてくれて論考を進めてくれたり、とてもていねいな本でもあります。
  バッハの音楽をCDで聴きながら読むと、心は1700年代のドイツに飛び、芸術性と宗教性の融合したバッハの世界を存分に旅することができるでしょう。そんなわけでこの本、おすすめです。

  (2007年2月22日記)

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