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『癒しの神学 第45回神学セミナー「心の病の理解と受容」

 
  (関西学院大学神学部ブックレット 2)
  関西学院大学神学部 編、キリスト新聞社、2009年12月25日
  価格:1600円 (+税)

 心の病に対してキリスト教には何ができるかを探る、わかりやすい本です
 

 この本は、主に心の病や障がいに対してキリスト教がどうアプローチできるのか、という観点から書かれており、特に最初からうつ病についてクローズUPされていますから、うつ病を抱えている人には良い本だと思います。
これは自殺者の数が非常に多い日本で、その自殺者の約30%がうつ病患者であったという高い数字を受けてのことでもあるのでしょう。
 逆に、それ以外の病気については、それほど深くは掘り下げられてはいません。しかし、心の病全般に取り組んでこられたキリスト者の方々の実践に基づいた報告が豊富に盛り込まれているので、うつ病以外の人でも、じゅうぶん参考にはなるのではないかと思います。

 私が個人的に面白いなと思ったのは、「聖書が書かれた時代には、病気の原因が悪霊にあると信じられていたが、その事によって逆に、古代のほうが身体と精神を切り離すことなく、全人的に人間を捉えることができていた」という視点が示されていることです(p.60-62)。
 この視点から、聖書の中にある古代人の癒し物語を読み直す事で、私たちの社会における癒しについても、新しい展望が見えてくるのではないかと感じさせられました。
 また、人類史上最初の「病院」を作ったのではないかとされる、4世紀の司教バシレイオスの実践についての報告や(p.72-79)、「癒しの礼拝」の式文の例なども盛り込まれており(p.154以降)、観念論ではない実践論的なアプローチに非常に好感を持ちました。

 薄い本ですが、セミナーでの講演録なので、非常にわかりやすく、読みやすいものになっています。また内容的に非常に示唆に富む見解が、短い講演の中に凝縮されていますので、非常にお得感が高いです。
 ただ、在庫は僅少で、中古品でしかオーダーできないようです。関心のある方は、図書館などを覗いてみられてはいかがでしょうか。
 (2012年10月4日記)

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