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『ふしぎなキリスト教』

 
  橋爪大三郎・大澤真幸 著
  講談社現代新書、2011年5月20日
  価格:850円 (+税)

 キリスト教に対する愛が感じられません。
 

 まず読み進むうちに感じたのは、「キリスト教に対する愛が無いな」ということでした。これは島田裕巳さんの『キリスト教入門』でも同じ事が言えますが、キリスト教の入門書であるというふれこみであるに関わらず、キリスト教の魅力が伝わって来ないのです。
 基本的に、「キリスト教ってふしぎですねー」「わけがわかりませんねー」「日本人には理解できないですねー」「でも、日本人でよかったですねー」という姿勢で書かれているので、キリスト教への入門書ではなく、むしろキリスト教を遠巻きに眺めて揶揄するような調子で貫かれています。
 文体は非常に読みやすいですから、スラスラと読み進むことができます。しかし、この本のわかりやすさから、この本を読んでキリスト教が「わかった」という気分になられると、クリスチャンたちとしては非常にうれしくない、という事は申し上げておきます。
 この本にある知識や事実として間違っている点については、別の書物『ふしぎな「ふしぎなキリスト教」』で、じゅうぶんに指摘され、列挙されていますので、ここでいちいち申し上げる必要はありません。
 また、その『ふし「ふしキリ」』でも触れられていることですが、この本(ふしキリ)の中で言及されているキリスト教は、全部本にのっていることからちょっとかじってきたようなキリスト教関連の知識にすぎず、それも非常に古い本ばかりで、要するに「書棚の上のキリスト教」あるいは「机の上のキリスト教」でしかありません。
 本当にキリスト教というものを「わかる」ためには、生きた生身の、現在日本に普通に生きているクリスチャンの姿を見るのが一番わかりやすいのです。しかし、この本にはそういう個別具体的な人間としてのキリスト者は一切登場してきません。
 むしろキリスト者自身がこの入門書を読んで、「こいつは私のことが全然わかってない」と感じるのですから、この本はキリスト教入門書としては失格なのです。
 当教会牧師としては、この本はオススメしません。
 しかし、このレビューで興味を持たれた方が読みたいなと思っても、もちろん読むのは自由ですし、右のAmazonのリンクからポチッと注文されてもよいのですが、現在もこの社会で生きているキリスト教とその信徒の実像を理解するには全く役に立ちませんから、時間の無駄ではないでしょうかと進言しておきます。
 (2012年12月31日記)

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