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山口里子 『新しい聖書の学び
 山口里子著
 新教出版社 2009年4月25日
  価格:1,900円 (+税)

 イエスが何のために、いかに戦ったかが明らかになります
 新しい聖書入門として好適です。高校生でも十分読める文体で書いてあります。
 その一方でやはり教会の人でないとわからない予備知識も必要な記述や用語も結構出てくるので、教会での少人数グループでの学習会の教科書には非常に向いているという気がします。
 キリスト教入門書というわけではありませんが、ある程度キリスト教に馴染んで、キリスト教や聖書についての従来からのありがちな解釈を知っている人に対しては大変良い刺激になるはずです。

 この本は、従来の伝統的な聖書の読み方がいかに男性優位的で男性にとって都合の良い成り立ちからできあがってきたかを明らかにし、それを真っ向から覆して、これまで隠されてきた初期教会の女性たちの豊かな働きを明らかにしてゆきます。
 そして、イエスが本当に望んでいたのはどんな世界だったのか、それをいかに「神の国」として実演しようとしていたのか。彼が何のために、いかに戦ったのかについて、非常に明確に示されています。

 ヘブル語聖書(いわゆる旧約聖書)とキリスト教証言書(いわゆる新約聖書)の成立のいきさつから、その中の代表的な物語の中に秘められた女性たちの活躍を、次々に「発掘してゆく」のが本書の醍醐味です。
 簡潔にわかりやすく、しかし要点を突いた形で女性たちの活き活きとした姿を掘り出して見せてくれる手際は、読んでいて非常に小気味好く感じます。そのダイナミックでスピーディ、かつ明快でわかりやすい語り口に快感を覚える人は少なくないのではないでしょうか。

 本書を読めば、新しい聖書の読み方を身につけて、改めて聖書を読むことに新しい楽しみを見つけることができるでしょう。
 「歴史的なイエスの探求は行き詰っている」とか「終わっている」となどと言う人がいます。しかし、決してそうではありません。
 これまで隠されていたイエスと女性の使徒たちの関わり、また初期教会での女性たちの活動、ローマ帝国における発展・拡大の実態の解明は、少なくとも日本ではまだ始まったばかりです。むしろ、これから様々なことが明らかになり、私たちの聖書理解が大きく変えられてゆくことになるでしょう。そういう意味でイエスとその前後の時代の歴史的研究と、そこから私たちがキリスト教会のこれからの宣教を学ぶことは期待と希望に満ちています。
 クリスチャンにとって、この期待と希望の入口として、この本は好適な聖書入門書であります。強くおすすめしたいと思います。

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