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山浦玄嗣 『ナツェラットの男
 山浦玄嗣(やまうら・はるつぐ)著
 ぷねうま社 2013年7月24日
  価格:2,300円 (+税)

 豪放磊落なイエスが活き活きと蘇ります
 たいへん面白い短編小説集です。
 ナザレのイエス(ナツェラットのイェシュー)をめぐる様々な人間模様が、それらの人びとの口を通して語られるという体裁をとり、イェシューがどんな人物だったのかを浮かび上がらせる手法をとっています。

 一人一人の語りが適度に長すぎないコンパクトな小説としてまとまっており、非常に読みやすくなっている上に、それぞれの語り部の言葉づかいが方言丸出しで、とても生き生きとしていて躍動感があり、ユーモアもあり、とてもよくできた小説集だと思います。

 イェシューの生まれ育ちやナツェラットでの家族や友人たちとの人間関係、男性の弟子たちと女性の弟子たちの様子など、新しい聖書研究の結果も踏まえながら、著者の医師としての経験も踏まえた想像力を加えて、前半は説得力のある物語となっています。

 ただ、後半の、特にイェシューの受難や復活については、旧来の伝統主義的な聖書解釈を出ておらず、その点がやや残念でしたが……。それでも、ユダについての描き方は、近年発見されたユダの福音書の影響もあるのでしょうか、彼こそがイエスの真意を知る者として描かれているのは画期的です。

 ガリラヤ(ガリル)訛り丸出し(それが本書ではケセン語で語られる)のイェシューの描写に、実はイェシューはこのような野太く豪快で頼もしい、磊落で楽しい好青年であったのではあるまいかと、こちらの想像力も豊かにされます。
 そして、このようなイェシューにこちらも生きる元気を与えられるのです。

 帯には「小説 わたしの聖書」と書いてあり、もちろん小説というものは、私見や主観を交えてものもであるのは当然です。しかし、それにしても著者としての真実を力を込めて書き込んだ感があふれており、イエスを生き生きとした姿で捉えるのに、非常に良い小説だと思われます。
 ご関心のある方はぜひお読みくだることをお勧めします。

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