「下世話なQ&A」の入口に戻る

 Q. 結婚式場の神父さんって、本物なんですか?

 新郎  「あれ、ガイジンじゃないや……」
 新婦  「え? ホントだ。この人違うんじゃないの?」
 牧師  「いえ、わたしが牧師ですけど」
 新郎  「神父さん?」
 牧師  「いや、牧師です。新婦さんはこちらの方ですね」
 新郎  「……(くだらなすぎて絶句)」
 新婦  「ねぇ、これホントに神父さんなの? ガイジンじゃないよ。日本人の神父さんなんかニセモノみたい、ヒゲもはえてないし」
 牧師  「なに言ってるんですか、青い目の金髪のが牧師だと思ってるんでしょ? 本当はああいうのにニセモノが多いんだよ。さぁさぁリハーサル始めよう。次の式もつまってるんだから……!!(若干フキゲン)」

(2002年6月に受けた質問より、式場で新婚カップルが抱きそうな疑問を会話形式で再構成)

 A. 本人に聞いて確かめたらいいんだよ。

い目の神父の正体

  結婚式場で働いている青い目、金髪の外国人は、たいていニセモノと思っておいたほうがいいです。月曜から金曜までどこかの英語教室か何かでアルバイトしていて、土日になると結婚式場でアルバイトしているという、フリーター外国人が多いのです。
  キリスト教の神父さん、牧師さん、というと外国人。外国人といえば青い目で金髪の、ちょっと日本語のヘタっぴーな白人さん(「アナタハ、カミヲ、シンジマースカー?」的なアレ)という固定観念みたいなものが日本人の間にはあって、それを逆に利用している商売なのですね、あれは。
  「ガイジン」と言うと、すぐアメリカ白人を思い浮かべるのも日本人の悪いクセです。「ガイジン」というか「外国人」と言えば、日本国籍を持っていない人はみんな「外国人」のはずで、日本人と見分けがつかないような中国人・韓国人も外国人だし、日系でもアメリカ国籍なら外国人だし、異人種でも白人ばかりではなく、黒人もたくさんいるわけです。それなのに、「ガイジン」と聞くだけで白人を思い浮かべる人が現実には多いのではないでしょうか? 黒人の牧師さんが結婚式場にいたらきっとびっくりして違和感を覚える人がいると思います。本当は黒人の牧師さんでも、東洋人の牧師さんでもたくさんいるんですけどね。キリスト教は人種関係ないですから。
  あと、「牧師は男性」という思い込みもずいぶん浸透してますね。プロテスタントの牧師さんには女性もたくさんいます。たしかに男性のほうが割合は多いですが、女性の牧師もたくさんいます。結婚式の司式を女性の牧師がするのも、なかなか素敵なムードですね。
  しかしまぁ多くの日本人は、教会の牧師さんといえば白人の男性、という思い込みを持っている人が多いです。それも男前でないといけなくて、ヒゲをはやしてないといけない。ヒゲのない白人男性は牧師っぽく見えないときもある。逆にヒゲがあれば日本人でもなんとなく牧師っぽく見えるときもあるかな、みたいな。
  そういう多くの人の思い込みを利用して、結婚式場側も、ちょっと男前の白人男性を雇って、牧師役をやらせ、パンフレットなんかにも印刷して、「ほーら、いいムードでしょう」と宣伝したりもするのです。しかし、そういう白人男性はたいていは、牧師でもなんでもない、ただのフリーターである場合が多いのです。
  もちろん白人の牧師もいます。外国から派遣されて日本にやってくる宣教師の中には、白人の男性牧師もいます。そしてそういう人が、結婚式場やホテルの結婚式の仕事を請け負ってしていることもあります。しかし、ホテルの結婚式場などで出会う牧師さんは、外国人よりも日本人であったほうが、ホンモノの牧師さんであることが多いです。日本にも牧師はたくさんいるわけで、わざわざ外国から呼ぶ必要はないのです。


日本人だったら安心かな?

  では、日本人だったら安心かというと、そうでもない場合もありましてね。
  たとえば、なんで結婚式場にそういうニセ牧師が多いかというと、やはり人手不足なんですね。当たり前です。だって、結婚式というのはやはり日曜日が多いでしょう? しかし、日曜日というのは教会で聖日礼拝というメインの礼拝が行われる日ですから、牧師は一週間でいちばん忙しいときです。また、その前日の土曜日も日曜日の準備で忙しかったりするわけです。だから、土曜日、日曜日にホンモノの牧師を確保するというのは、実はたいへんなのです。
  そこで、そういう結婚式場で働いている牧師というのは、たとえホンモノの牧師の資格を持っていたとしても、教会の主任の牧師ではなくて、副牧師であったり、隠退した牧師であったり、学校で働いている牧師であったりするし、あるいは、教会の主任の牧師であったとしても、あんまり頻繁に結婚式の仕事をしていると、「教会のほうをほったらかしにして……!」と教会員の人たちに怒られてたりなんかするわけです。
  まぁそんなこんなで、ホンモノの牧師を確保してシフトを組むのは、けっこう式場としてもたいへんだったりするわけで、ある式場では、どうしても連絡のとれる牧師に都合がつかなかった場合に、何食わぬ顔でそのホテルの支配人がガウンを着てやってしまった……なんてこともじっさい起こっているのです。


やっぱりホンモノのほうがいいでしょう?

  「まぁいいや、ホンモノでもニセモノでも、形だけでも式ができればいいんです」という人もいるかも知れませんね。
  でも、無宗教的な人前式でなくて、キリスト教式/チャペル式を望む人が多いのは、やはり、結婚という人生の一大決心、一大変化、しかも家族をも巻き込んだ大きな喜びのときなのだから、ふだんは神さまなんか意識しないような暮らしをしている人でも、このときばかりは神さまの前できちんとした式をあげたいと思うものだからではないでしょうか。
  そして、司式をする側の牧師も、たとえ、結婚する二人がキリスト教の神さまを信じている、いないに関わらず、やはり自分の牧師/聖職者としての責任において、しっかりと神さまの前で二人を結びつけてあげ、将来の安定と幸せを神さまに確かにお願いしようと思って、本気で取り組んでいるのです。
  人生の終わりの儀式であるお葬式で、お経をあげているお坊さんがニセモノだったら、やっぱりみんな怒るんじゃないでしょうか。すごくバカにされた気になると思うんです。それは亡くなられた方や残された方々への冒涜(ぼうとく)ですよ。
  同じように、人生の大きな意義を持つ門出のときに、神さまの前で二人を結びつけ、幸福を祈る牧師がニセモノだったら、それは二人と家族をバカにしていることにならないですかね。
  だから、結婚式を教会で行うかどうかは別としても、司式者はホンモノの牧師のほうがいいと思いますよ。

  わたくし、三十番地キリスト教会の牧師などが結婚式場の仕事をいただいたときは、前もってリハーサルのときに、ちゃんと自分の教団と自分の名前とを自己紹介してご挨拶します。「日本キリスト教団の牧師である富田と申します。本日はおめでとうございます」とご挨拶してますね。すると、お二人もご両親も、「あ、ちゃんとした牧師さんなんだ」と思って安心した顔をされたり、表情をひきしめて「よろしくお願いします」と頭を下げてくださったりします。すると、結婚する人も式を司る者も、気合が入りますね。気持ちが入ります。すると、やはりその式はいい式になります。
  でもさぁー、時々、日曜日の朝に請け負った仕事で、結婚する本人たちの家族がクリスチャンだったりなんかすると、これはこれで気まずかったりするんだよねー、おたがい。
  ノン・クリスチャン家族の都合に合わせて不承不承、聖日礼拝を休んで日曜の朝に式を設定せざるをえなくなったクリスチャン・ホームのお父さんなんかがさ、司式の牧師を見て、「なんだっ、こいつも日曜の礼拝サボって、こんなところでバイトしとるやないか」ってな目でジッと見つめるわけやね。「このナマグサ牧師め」ってな目でね。あれは気まずい(笑)。それでさ、「先生、
こんな聖日の朝に、どうも申し訳ありません」とか挨拶なんかされると、こっちもすぐ相手がクリスチャンだとわかる。「やっべえー、マジ・クリスチャンだよ、この人……!」とアセる気持ちを隠しつつ、「いえいえ、こんな聖日の朝に、ご苦労様です」と、ぎこちなく返したりなんかしてね、ハッハッハ……ハァ。で、二人とも人間同士あやまりあってて、神さまにはあやまってないんだな、これが。
  このニュアンス、ノン・クリスチャンの人にはわかりにくいかな? ま、これは余談です。


ヘンだなと思ったら確かめよう

  ま、とにかく結婚式の牧師はホンモノのほうがいい、これに越したことはありません。こだわらない人に強制はしませんが。
  たしかめる方法はカンタンです。
  「あなた、ホンモノの牧師さん?」と単刀直入に聞けばいいのです。それでうまくかわされた場合は、「どちらの教団の牧師さんですか?」と聞いてください。「わたしは○○教団の○○と申します」とハッキリ答えてくれたら、たいてい本物です。
  しかしまぁ式の当日、リハーサルのときになって、実はホンモノの牧師さんではなかった……なんてことになっても、どうしようもありませんよね。だから、牧師がホンモノであるかどうかが気になるようであれば、あらかじめホテルや式場側に申し込む最初の段階で、「こちらの式場で司式をなさるのは、本物の牧師さんですか?」と聞いてみてください。
  ああ、いちばん聞きやすいのは、チャペルで誰かの結婚式をじっさいに見学させたもらえたりなんかするでしょう? ああいうとき、ついでに聞いちゃうのがいちばんいいタイミングです。「あの方はホンモノの牧師さんですか?」ってね。もし時間が合うようだったら、「ちょっとお会いしたいんですけど」って、わがまま言ってみるのもいいかもしれませんね。
  牧師も、流れ作業の結婚式ってのは、正直気持ちがすさんでたりなんかするんだよね。毎回、毎回、おなじお話してさ。でも、結婚する二人とちょっと会うことができて、少し言葉を交わしたりして、二人のことがいくらかわかったら、「この二人のために……!」というお話をしたりできるし、祈りの言葉も決まりきった文句じゃなくて、二人の状況を踏まえた心のこもった、その二人のためだけのお祈りの言葉も出て来るんだよね。
  だから、結婚式の牧師がいったいどんなヤツなのか、アクセスしてみてください。それは牧師としてもうれしかったりするんです、はい。

〔2004年5月22日記〕

このコーナーへのご意見(ご質問・ご批判・ご忠言・ご提言)など、
発信者名の明記されたメールに限り、大歓迎いたします。
三十番地教会の牧師はまだまだ修行中。
不充分あるいは不適切な答え方もあろうかとは思いますが、
なにとぞよろしくご指導願います。
ただし、匿名メール、および陰口・陰文書については、恥をお知りください。

ご意見メールをくださる方は、ここをクリックしてください……

 「下世話なQ&A」の入口に戻る

 礼拝堂(牧師のメッセージ・ライブラリ)に入ってみる
 教会の案内図(サイトマップ)へ戻る