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「バカダークファンタジー」としての聖書入門
 架神恭介 著
 イースト・プレス  2015年4月23日
  価格:1,500円 (+税)

 クリスチャンの論理がいかに世間に通じないかを知るには格好の書
 
 とにかく面白い本です。旧約聖書の最初から新約聖書の最後まで、全巻を破天荒に解説した異色の本です。
 著者は『仁義なきキリスト教史』の作者でもあり、「古典解説の鬼才」と呼ばれている注目の人です。
聖書はキリスト教の正典として有り難がられていますが、そのイメージは本当なのか。聖書は本当に愛の書であり、神は愛の神なのか。それを、クリスチャンの目ではなく、全く信徒ではない目で、古典文学をそのまま読み込む形で解説してゆきます。
 その結果、ヤハウェは自分を信じない人間を徹底的に殺しつくす恐怖の神であり、旧約聖書はそのヤハウェは殺して殺して殺しまくるどうしようもない血なまぐさい物語集、新約聖書はイエスの行動はともかく、後を継いだ人たちが外部への攻撃と内部抗争に明け暮れるくだらない本ということになります。
 その恐ろしさ、くだらなさを、抱腹絶倒の文章で最後まで一気に語り尽し、毎ページ笑いを誘われます。
 もっとも、笑っているのは批判的な聖書学に理解のある人だけで、保守的、伝統的な聖書理解に慣れ親しんでいる方は、はっきり言って激怒するか、唾棄すべきものと判断する可能性大です。私は最後まで爆笑のしどおしでしたが。

 著者はからかい半分でこのような本を書いていないことは明らかです。聖書の各種翻訳、聖書学の入門書的な本、注解書など、基本的な文献及び学説はちゃんと押さえていますから、侮ることはできません。
 また、すべてを毒舌でこき下ろしているのではなく、信徒ではない者としても感銘を受ける部分は感銘を受けると評価してくれています。それはほんの一部の作品についてなのですが。
 新約聖書の解説に置いては、若干、田川建三先生の説に流れ気味というか、影響が大きく見られますが、それを完全に鵜呑みにしているわけでもありません。ちゃんと我らが辻学先生のお名前も説も紹介されていますよ。

 この本で書かれているのは、聖書を精読したある非信者の「率直な」感想と言えるでしょう。その率直さが鋭く、また論理的であるために、信者にしか通じない意味不明瞭なキリスト教側の言説は歯が立ちません。多くのキリスト教の本が意味不明になってしまうほどの破壊力をこの本は秘めていますが、ここまで破壊されるとかえって爽快でもあります。
 このような本に対して、クリスチャンとしてはどう応答しましょうか。
 とにかく一読してみることをオススメします。

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